2014年08月

私のテキストサイトの感覚は古いので、開設から2か月経ってもアクセス数があんまり伸びないことに驚愕しています。
ブログを初めて作った10年前は、だいたい今くらいの時期には二重カウントなしで100PV/Dayくらい行ってた記憶があるのですが。
やはりこれは時代の差だな。
もはや、今は人々が能動的にインターネットを見る時代ではない。
テレビのようにインフラ化しているから、従来のテキストサイトみたいに情報を発信するだけでは受け手へ到達しない。押し付けるくらいでちょうど良いのだ。

これを乗り越える策について、いくつか思いつくのですが、
今回はその中で一番お手軽な方法をとることにしてみましょう。

つまり、
『人が求める記事を書く』
のです。

世の人たちが求めるものを書きつづければ読者も増える。
これは自明の理です。

ライブドアブログにはPVランキング機能というものがあります。
ライブドアを利用しているブログは全て網羅されたランキングです。
これを見たところ、上位に来るサイトには次のような傾向がありました。

(1)まとめブログ
(2)ペットor自分の子供
(3)感動エピソード
(4)女性をターゲットにする

おおよそこの辺りを押さえています。

その中でもまとめブログは圧倒的なPV数を誇っています。
やはり、いろんなところからパクってくるというのが強いのでしょう。結局、最後は元気玉が勝つのです。

ということで。上記(1)~(4)を実践することで、弱小テキストサイトも力を得ることが出来るのです。
今回から数回かけて、その手法を探っていくことにしましょう。
目指せ、100万PV/Day。


第1回目の今日は、テキストサイトを標榜しているブログらしく、小説を書いてみましょう。
・各所からネタをパクってくる
・ペットや子供ネタ
・感動エピソードで攻め込む
この辺りを中心にいきたいと思います。
タイトルも、それだけで誰もが釣られるようなものを持ってきたいですね。


「アナと黒子ウォッチ」

吾輩は猫である。名をばさぬきの造となむ言ひける。
朝、スウプを一さじ、すっと吸ってお母様が巨大な毒虫になってしまっているのに気付いた。
その皺くちゃで灰いろの、大きな顔を見上げたとき、オツベルの犬は気絶した。さあ、オツベルは打ち出した。六連発のピストルさ。ドーン、グララアガア、あなたの機関はそれきり止まつた。
今日、ママンが死んだ。ただ春の夜の夢のごとし。
「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」
いつから吾輩が猫であると錯覚していた? お前も蝋人形にしてやろうか!!!
吾輩はオツベルである。向上心はまだない。セリヌンティウス? 邪知暴虐の王? ハッ。っていうこのスタンス。

どこまでやれるか自分を試したいの。そうよ、変わるのよ私。
この想いをビンビン伝えてほしいから、千の風に、千の風になって、この大きな空を、一万年と二千年前からヘビーローテーション。

私のお墓の前で泣かないでください、そこに私はあります!!!
おばあちゃんからもらった割烹着28号のフィギュアを盗んだ犯人は自首してくださぁい!!
そんな声が3年前から……ちょっとずつ……聞こえるようになりました……

親譲りの無鉄砲でいつも損してばかりいる。雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ、ありのままの自分を見せるのよ。少しも寒くないわ。
だってもう自由よ、何でもできる。
一日ニ玄米四合ト、味噌ト少シノ野菜と、川上からどんぶらこ、どんぶらこと流れてくる大きな桃と、
かぼちゃチャーシューメン、明太子コンビーフ、ビーフステーキなキス、キスフライ、フライドチキン、きんぴららっきょうと、
トロは中トロ コハダアジ(ヘイ、ラッシャイ)
アナゴ甘エビしめサバスズキ(ヘイ、ラッシャイ)
ホタテアワビに赤貝ミル貝(ヘイ、ラッシャイ)
カツオ カンパチ ウニ イクラ(ヘイ、ラッシャイ)
だけでいいんだなぁ。それがもらえれば僕は満足なんだなぁ。

出会った頃はこんな日が来るとは思わずにいた。ごん、お前だったのか、いつも、栗をくれたのは。
光浴びながら歩き出すって言ったじゃない、
一緒に海に行くって、のみならず!いっぱい映画も見るって、約束したじゃない、会いたい。




99%、コピペだけで構成されています。
元ネタが全部わかった人はある意味凄い。

東京・京橋のもうやんカレー前を通りかかったところ、怪しげな文章が書かれていました。


2014-07-19-17-46-04

飲めるカレー屋。

いや、そりゃ、あるカテゴリーに属する人々にとっては、カレーは飲み物かもしれない。
「まずはこれだね」とか言いながらジョッキでいっちゃうのかもしれない。
仕事の後のカレーイッキは格別なのかもしれない。

けれど違うだろ。もうやんカレーは違うだろ。

知らない方のために補足しておきますと、
もうやんカレーとは、野菜を大量に投入し、2週間煮込んだカレーらしいです。バナナとか入ってます。
それはもうドロドロです。
真珠夫人を2週間煮込んだ上から牡丹と薔薇のピューレをかけてたわしコロッケにかけたってくらいのドロドロさ加減です。

これを「飲めるカレー」だなんて、誤表記でしたじゃ済まされません。
こんにゃくゼリーよりも喉に詰まりやすく、
正月の餅よりも熱く、
魚の小骨よりも量が多い。(並盛で300gあります)
放置していたら、サリンを超える大量殺戮兵器となり、
エボラを超える死者が出ることは間違いないでしょう。

2014-07-19-17-46-43

見てみると、コーヒーとルイボスティーはお代わり自由とのことです。
詰まったらこれで押し流せというのか。
いくらなんでも、喉に詰まった昼ドラドロドロカレーを押し流すのにルイボスティーでは力不足ではないだろうか。

もうやんカレーのCSRはどうなっているんだ。
というよりむしろ、悪の組織レベルではないか。

そう思った後、よくよく見てみると、

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「獺祭が飲めるカレー屋」


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獺祭が積んでありました。
純米大吟醸みたいです。
おいしそうですね。

ひどい釣りを見ました。

先日、このようなニュースがありました。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41444:健常者に勝った義足の陸上選手が巻き起こした議論

ハイテク義足を装着した走り幅跳びの選手が、とある公式大会で優勝したというニュースです。
まぁ何を今さら、という感じのニュースではあります。
例えば、世の中には車いすマラソンというものもあります。
車いすでフルマラソンを走るというもので、その世界記録は1時間20分14秒です。
あまりにも速すぎるため、車いすマラソンと通常のマラソンを同時開催する場合には車いすランナーを先にスタートさせるという対応を行うくらいです。

こういう状況を鑑みるに、
もはや義足の選手と他の選手を比較し、そこで勝った負け多を議論する時代はとうに過ぎているのです。

また、乙武さん(スポーツライター)やら、某外資系コンサルタント(なんか知らんが金もってる)やらが、
義足を通常の道具として扱うことに肯定的な意見を述べていることから、
これから先の時代は、
いかにして義足をうまく使い、記録を伸ばすのかというものに変わっているのです。

では、どのようにすれば記録は伸びるのか?
それを考察してみました。
分かりやすく、100m層の記録を伸ばすことを主眼に置きます。

(1)カーボン素材を使う
軽く、強く、バネのごとき弾性を持つカーボン素材。金属とは比べ物にならないくらい使いやすいです。
おそらく、先述の走り幅跳び選手はこれを使用していたものと思われます。
もはや、素材がカーボンであることは常識の反中であり、そこから先の形状的な工夫が必要になるのでしょう。


(2)ドクター中松のあれを使う。
バネのごとき弾性といえば、もはやあれしかありません。
これは間違いなく、すごい記録が生まれます。

nakamatu

しかし、この写真を見ると、海外でもこれを用いる研究が進んでいるように見えます。
今からこれを義足に使用しても、後発ではきっと勝てません。
もっと新しい工夫が必要です。


(3)ゆるキャラの力に頼る。

日本で今最も研究が盛んなのは、ゆるキャラです。
様々なゆるキャラが生まれては消えていきます。その進化は日進月歩。
この分野では、日本が圧倒的に他国に先んじているのです。

funa

その中でも、やはり特にふなっしーです。
このジャンプ力は凄まじいものがあります。
古来より、一流のアスリートは短距離走と幅跳びの2種目で力を発揮してきましたが、ふなっしーもその系譜を継ぐ者でしょう。
この身体能力はドクター中松を大きく上回ります。
もはやパワードスーツと呼んでも差し支えないでしょう。
日本に求められているのは、これを量産する科学能力です。


(4)電動にする。
世の中には電動ローラースケートというものがあります。
乗ってれば時速20kmで進みます。
これで走ればめっちゃ速くね?


(5)もう飛ぶくらいにする。
スカイハイさんみたいな感じでお願いします。

こんなの。
skyhigh



(6)本当の意味での火の玉小僧。
自らを弾頭と化します。義足の形はこの段階でパラダイムシフトを迎えます。
義足という概念を再構成するのです。
misile2

ここまで来ると、その時速は7km/秒です。
100mの世界記録は、0.014秒まで更新されます。
義足って凄いな。

とは言っても、もちろんこんなのが許可されるはずありません。
何故かって?
トルソーの位置が見えないので、写真判定の時に困っちゃうからさ。


ですので、残念ですが、こういうタイプの義足は使えません。
あと、ミサイルは点火から最高速度に達するまでに時間がかかるので、点火のタイミングが難しく、扱いにくいです。
やはり機械に頼るのはやめましょう。最後に頼るのは人の力です。


(7)大胆にボブサップを起用。

義足の定義が分からない以上、ボブサップを義足の付属品と見做すことも可能です。
そこで、このような義足を用意します。
gisoku1


義足にはロープが付いており、100m先でボブサップが思いっきり引っ張ります。
ボブサップの力は強力なので、一瞬でゴールラインの向こう側へ引かれます。
カツオの一本釣りを想像すれば分かりやすいと思います。



(8)結局最後は元気玉に頼ります。

やはりボブサップだけでは力不足だと思うので、
いろんな人の力を借りることにします。

gisoku2

ボブサップの他に、
最強アスリートのムロフシ・コージ、
伝説のビッグフットであるワダ・アキコを配置しています。
その他に、人類最強である吉田沙保里さんなど、数多くの力を直列に接続することによって、爆発的な力を産み出すことが出来ます。


義足はどこまで進化するのでしょうか。
その答えは、「みんなの力を合わせれば、どこまでも強くなれる」でした。

でも、和田アキ子一人いればだいたい最強に見えますよね。上の絵を見ると。


 図書委員の仕事なんて、別に楽しいものじゃない。カウンターに座っているだけだから図書室に置いてあるマンガ読み放題じゃん、簡単だし楽しそう、 なんて思っていたけど、よくよく考えてみたら図書室にあるマンガの数なんてたかが知れてる。なんで手塚治虫が許されてワンピースが許されないのか、ぜんぜん意味わからない。
そんなわけで、火曜日の放課後は家から持ってきたマンガを読む日だ。あとは島田君のマンガを持ってきてもらう日。
 島田君の持ってるマンガは私とぜんぜん違うから面白い。たとえば幽遊白書。そしてハンターハンター。あれを読んでしまったら、確かに冨樫仕事しろって言いた くなるわ。今までネタかと思ってたけど。そしてハンターハンターの続巻を島田君に要求し、それが半年以上出てないことにショックを受ける。だからその仕返しとして、島田君にCLAMPの「X」を読ませる。
 続きは? と聞いてくる島田君に私は答える。
 もう十年以上出てないよ。
 あからさまに落胆した島田君を見て私は笑う。悔しかったらまずは冨樫に続き書かせなさいよ。
 でも本気で面白がってるわけじゃない。何より、私もXの続きが読みたいんだ。私はお姉ちゃんに同じことをやられたから分かる。でもそうやって、怨念は連鎖していくものなのだ。
 図書委員の仕事はそんな感じで進んでいく。委員の相方が気のいい奴で良かった。放課後の貴重な時間を取られるストレスも、それで幾分和らいでくれる。

 図書室を閉めて、帰る前にはいくつかの雑用が残っている。
 椅子や机を並べなおすこと、窓とカーテンを全部閉めること、返却された本を棚に戻すこと。
とは言っても、図書室を使う人なんてほとんどいないから、そんなの5分くらいで終わる。今日だって、本は二冊しか返っていない。
 金枝篇という本の1巻と2巻だ。私が来る前に返却ポストに入っていたから分からないけど、多分同じ人が借りたのだろう。
「分類番号3ってどこよ」私は机を片付けている島田君に聞く。「見たことないんだけど」
「またえらくマニアックなもの借りる人もいるんだね」
 図書室で本を借りる人がいても、大体の場合は分類番号9の小説か、あからさまにカウンター前に置いてある手塚治虫のマンガか、どちらかだけだ。
 なんか表紙まで怪しい、と裏返して見ようとしたとき、本の中に何かが挟まっているのが見えた。ちょっとだけ頭を出しているそれを引っ張ってみる。
 青い和紙に黄色と白の押し花。それは多分栞だ。栞だけど、またえらく古風な趣味だな。
 明らかに手作りであるその押し花の栞を、多分この持ち主は挟んだまま忘れてしまったのだろう。きっと作るのに時間がかかったであろうそれを捨ててしまうのは、あまりにも申し訳ない気がする。
「どうしたの、何か見つけた?」
 カーテンを閉め終わった島田君がカウンターのほうへ来る。
「うん、忘れ物」私は目線の高さにその栞を掲げる。「なんか手作りっぽい栞」
 ちらりとそれを見やって、島田君はこともなげに言う。「あぁ、それ、多分シオリちゃんのだよ」
 シオリちゃん?「誰それ」
「僕と同じクラスのシオリちゃんだよ、いつも本読んでるから名前覚えやすくて」
「なんだか出来すぎた名前だよね」
「名は体を表すってやつじゃないの? 使い方があってるかは知らないけど。で、そのシオリちゃんに昔見せてもらったことがあるんだよ、手作りの栞。その時のにそっくりだから、多分あってる」
「ふーん、そうなの」意外にモテるのねあなた。
 それにしてもよくできた栞だ。ハンターハンターに差すのは何か違うけれど、私の持ってる少女マンガに差すなら悪くはない。まぁ私にはこんな器用な真似はできないけど。
 そのときにチャイムが鳴って、「うわ、やべ、早く行かないとバイトに遅れる」と島田君はあわててカバンを掴む。
「あぁ、うん、後はやっとくから早く行きな」
「おぉすまんな稲垣、じゃあよろしく」
 手を振る島田君を見送る。それは太陽みたいな笑顔だと思う。もちろん変な意味じゃない。温度が高いんだ。
 サーフィンをやっているって言ってたけど、夏の間じゅう海の上で本物の太陽を浴びつづけていたからなのか。
 そりゃ確かに人に好かれるわ。
 握りしめた栞のラミネート加工が手に刺さる。これを持ち主に返さなければいけない。
 同じクラスだって言ってた島田君に持ってってもらえれば楽なのだけど、何となく渡しそびれてしまった。
 シオリちゃんって子を私も見てみたくなったのかもしれない、ちょっとだけ。

 島田君のクラスは階段を降りてすぐだ。私のクラスよりも随分手前。 通るときに時々覗き込むその教室の中は、私のクラスとだいたい一緒だって知っている。ロッカーの上にはバスケ部の私物がたくさん置いてある、そんなところまで。
 このクラスで知り合いと呼べる人なんて島田君くらいしかいないし、入ったのは初めてだ。
 西日が差し込む教室の中を見ると、女子が一人だけ残っていた。こちらには気付いていないみたいで、窓の外をじっと見ている。 確かに文庫本を机の上に置いてるけど、それは閉じられたままだ。だから、これが本当に島田君の言ってたシオリちゃんなのか、自信はない。いつも読んでるって言ったじゃんよ。
 シオリちゃんらしき人物の視線の先には窓があって、その先には海と砂浜があった。良い景色だ。私のクラスからは校舎が邪魔してこんなによく見えない。
 このまま黙っていても始まらないので、声をかけることにする。
「ねえ、あなた、シオリちゃんなの?」
 肩が跳ねる。こちらを振り向く。ミディアムボブの髪が遅れて揺れる。 声をかけられるなんて、全く予想していなかったのかもしれない、口をぱくぱくさせて、本当に驚いたという風情だ。
「ごめんね突然。図書室の本の中に忘れ物があったから、もしあなたのだったら返そうと思って来たんだけど」
 机の上に硬い栞を差し出す。窓の外の夕陽を一瞬強烈に反射する。それはとても眩しい。
 あっち向いてホイに釣られるように、シオリちゃんは私の手の中の栞を覗き込んで、
「それ、私のです。無くしたと思ってた、良かったありがとうございます」と、オーバーなほどに頭をぺこぺこと下げてくる。
「や、いいよ別に。感謝なら島田君に言ってよ、それがシオリちゃんのだって島田君が分かったから、持ってこれたんだ」
 島田君の名前を出した途端、この人は顔を西日越しの私にだってわかるくらいに赤くして、目を逸らして、そして嬉しそうに笑った。「覚えててくれたんだ、嬉しい」と。
 ふーん、と思う。なんだか面白くない。
「ありがとうございます、とても助かりました。あと、私の名前、シオリじゃないです」
「え、違うの?」
 目の前のこの子はシオリちゃんじゃなかった。けれど、島田君はシオリちゃんって言ってて、それを聞いてこの人は嬉しがって。意味わかんない。
「私の本名は奈々子ですよ、木村奈々子。シオリっていうのは、周りの子たちがこれを見て私に付けたあだ名です」
 そう言うとナナコさんは、机の上の文庫本を手に取って私に差し出す。
 その文庫本には栞がたくさん挟み込まれている。間違いなく10以上はある。
「うわ、何これ。なんか読み辛くない?」
 思わず言った私に、ナナコさんは笑って答える。「はい、すごく読み辛いです」
「しかも、どこから読めばいいか分からなくなるよこれ」
「分からないですよ。別にこの栞はどこまで読んだかの目印じゃないです。好きな言葉、後になって読み返したい部分、忘れてはいけないフレーズ、そういうものがここにあるっていう目印なんです」
「ふーん、そうなんだ」
 私とは本の読み方が全然違う。けれど別にどっちでもいい。
 一気に読み終えてしまえば、別に栞なんていらない。逆に、一気に読めないようなつまんない本なんて読みたくはない。
 会話が途切れて、ふと思い立った私は窓の外を見る。
 眼下には砂浜が広がっていて、探すまでもなくそこには島田君がいる。サーフショップの脇で、ボードを磨いている。バイト先はすぐそこだって言ってた。
「ねえ、ナナコさん、あなたの読んでるその本って何なの?」
 別に興味なんて無いけれど、手持ち無沙汰に私はそう話しかける。
「これ? これはダイアナ・ウィン・ジョーンズの九年目の魔法っていう小説」
「ふーん、聞いたことないけど、小説なんだ。なんか、ナナコさんは分類番号3のマニアックな本を読む人っていう勝手なイメージが出来ちゃってるんだよね。私と島田君の間に」
「分類番号3?」
 首を傾げたナナコさんに言う。「金枝篇とかいう凄そうな本」
「あぁ、あれは別に読みたかったわけじゃなくて」ナナコさんは机の『九年目の魔法』っていう文庫本を示す。「この本を読むために必要だったんだ」
「そうなんだ」会話をしながら私は、ナナコさんの話なんて聞いていなかった。それよりも、遥か遠くでボードと向き合う島田君の姿を見ていた。図書室ではあんな顔したことないじゃない。
 毎週毎週、ほとんど肩が触れ合いそうな図書室のカウンターの中で笑いながら本を読んで、それでも見たことのない顔を、遠くから黙って眺めるだけみたいなこの子がこそこそと見ているのだ。
 私の視線に気付いたのか、ナナコさんは確かめるように窓の外を見て、それから向きなおる。私の目を探るように見る。
「島田くんと仲、良いんだね」
 付き合ってるんだよとか何とか言えたらどんなに良かっただろう。私にはこの子が気に入らない。決定的な言葉ひとつで、ざっくりと一突きしてやりたい。けれど、すぐ分かるそんな嘘は逆に私の手を切りつけるだけだ。
「そんなことないよ、ただ一緒にやってる図書委員がすごく暇だから、二人でマンガ読んでバカみたいに笑ってるくらいの関係」
「そう、なら良かった」そう言って、私が返した黄色と白の花の栞を大事そうに眺める。「昔、島田くんに本を貸したことがあったんだ。探してた本を私が持ってるって人づてに聞いたのね。その時に使えるかなと思って挟んでたのがその栞なんだけど、本を返されたときにまず言われたのがこの栞のことだった。きれいだって褒めてくれた。だからひとつ作って渡したんだけど、今でも持ってるのかな」
「どうだろうね」
「そういうときに私は思うの。人生にも栞を挟み込めればいいのにって。こんな感じの、いちごの花で作った栞。あの時喜んでくれた島田くんの顔だとか、そういう数多くの場面をいつだって取り出せるように」
 私は逆ね、とナナコさんに言う。「面白い場面があったら、栞なんて取り出すのも惜しいから集中してどんどん読み進めたいな。きっとそう言う場面は何度だって出てくるから」
 二人の間にある栞はいちごの花。
 私は唐突にひとつの場面を思い出す。あれは中学校くらいの時だ。妹の誕生日には、毎年お母さんがいちごショートケーキを買ってくる。いちごが妹の好物だか ら。けれど私はいちごショートが苦手だ。上に載せられたいちごをどのタイミングで食べればよいのか分からないから。先に食べるには大きすぎるし、後に食べ るには酸っぱすぎる。何となく避けながら食べていた私のいちごを、横から伸びてきた妹のフォークが突き刺して持って行った。
 あまりに唐突な出来事に、私はその成り行きをじっと見つめることしかできなかった。『残してるから嫌いなんだと思った』というありがちな言い訳だった。
 別にいちごが好きなわけじゃない。正直、食べれても食べれなくてもどっちでもいい。ただ、残されたクリームだけのケーキを見て、どこか寂しい気持ちになったことを覚えている。だから私は、それからはいちごをひと口めに食べるようにしたのだ。
「私が金枝篇で調べたかったのは王殺しの話だったんだ。『九年目の魔法』で出てくる話。ねえ、図書委員さん、知ってる? 王が変わるとき、先代の王は次の王に殺されるんだって」
 今ではもう、ナナコさんの視線は探るようなものではなくなっている。夕焼けは密やかに夜へ向かい始める。
 ナナコさんは勘違いしてるよ。別に私はあなたのライバルじゃない。ただ相容れないだけ。
 ただ、これだけは知ってる。
 あなたが私の名前を知らないのと同じように、島田君もあなたの名前を知らないんだよ。シオリちゃんだと思い込んでる。そのことを私は言いたくてたまらないけれど、そんなこと絶対にしない。
 教えてあげるものか。




――――

(業務連絡)

落ちてたバトンを拾いました。お題は「栞」です。

書くのが遅くなりましたが、バトンを進めたいと思います。
次は、スポーツ雑記帳さん(http://soccer-and-others.jimdo.com/)へ、
お題「図書室」でお願いします。

何だかんだで、今日も「栞」を題材としたショートショートをupすることはできません。
予想以上にお盆は多忙でした。おかしいな。

ということで、今日も昨日に引き続き、時間が無い時の更新でお茶を濁そうかなと思います。

昨日このタイトルで記事を書いたところ、なんかアクセス数が上がっていたので、
やはり誰もが気にしている部分なのかなと思いました。暇な人ばっかりじゃないしな。
このブログのスタンスとしては昨日みたいな記事で良いのですが、そういうネタを見に来たわけではない人にとっては役に立たない文章になってしまいました。

本当は方法論について書くことが出来れば良いのですが、
残念ながら私は文章を書くに際し、方法論というものを一個も持っていません。こうすれば書ける、などという便利な何かを教える能力はありません。
ですので、今日は、私がどのようにして文章を書くのかを記すことにします。
もちろん、体系的な何かではないので、イメージ図を文章に書き起こしたものです。役に立つことがあるのかは分かりません。


まずはイメージ。
世の中には、「六次の隔たり」という概念が存在します。これは、知り合いの知り合いを六回辿ればあなたはすべての人と繋がることが出来ますよ、というものです。
日本人だけに限れば、辿るのは3回だけで済みます。
世界って意外に狭い。

この概念を文字に拡張すれば、それは暗号になります。
辿るベクトルを2段にすればアルベルティの暗号円盤に代表されるような多表式暗号になるし、
同じく3段にすればエニグマになるし。

この概念を文章に拡張すれば、それは詩になります。
全ての文章は、ルービックキューブを6段階回せば全ての文章と交換可能になるはずです。
ただし、私は2段階しか回しません。文章同士が交換可能になってしまうことは、記号の不備を意味するのです。
2段階。回して捻る。
最初にxy平面について回転したのならば、次はyzまたはzxについて回転させることが必要です。
こうすることで、想像力は奥行きを持ち始めます。

詩ではよくある手法です。
「赤い」と言いたければ、その代わりに「林檎」「停止信号」を持って来れば、なんか詩的に見えるじゃないか。

「赤いきつね」という言葉を詩的に変換すれば、

この北国で、信号はすべて白い。
とかなるわけです。最初は赤かったのが白くなってるのもポイントだよな。

私の中では詩もネタも一緒です。
なんか大袈裟に言ってればそれっぽくなる。

「赤いきつねと緑のたぬき」という言葉があったとき、
そこに信号っていう概念を持ち出せば、
きつねカワイソス(´・ω・`)とか言えるわけです。

あまりにも眠すぎて何が言いたいのか分からなくなってきましたが、
とにかく、伝えたいのは、
概念を回して捻ればその先には広大な世界が広がっているから、何かトリガー(ここで言う概念ってやつ)があればネタなんてそうそう切れはしませんよ、ということです。





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