以前、男子限定ライブの感想でも書いたのですが、
基本的に私はPlastic Treeについてニワカなんです。
あまり昔から追っかけてきた人ではない。

そういう人がまず当たる壁が、「どの曲から聞けばいいの?」という疑問。
(多分、今夏発売される「サイレントノイズ」以降、新規客が同じようなことを考えると思います) 
google先生に聞いてみても、あまり答えは返ってこない。
音源に関するレビューが少ないんですね。
でも音源の数は膨大という。

なので、少しでもそういう人の道標になれれば良いなと思い。
アルバムについてのレビューを書きます。
ヴィジュアル系についても、UKロックについても、あまり詳しくはないのですが。
初心者が書く、初心者のためのレビュー。


このレビューはリリース順ではなく、今現在好きなアルバムの順に書いていきます。そっちのほうがモチベーションが持続しそう。
最初に紹介するのはPuppet Show。
1998年発売の2ndアルバムです。
音楽シーン的には、ヴィジュアル系と小室系がともに全盛期で、音楽チャートに最も活気があった頃ですかね。

ヴィジュアル節を前面に押し出した前作の「Hide and Seek」に比べ、世界観の広がりがすごい。
何より、竜太朗さんのヴォーカルがより力を増しているような気がします。
曲によって歌い方を変えていく、その振り幅というか。

色々な曲が収録されています。
世界観も曲調もばらばらな11曲。
しかしその11曲は、一貫したPlastic Treeの世界。
アルバム全体を通して聴いてみると、その世界観に引きずり込まれます。
ふわふわしているバンドだとよく評されるPlastic Treeですが、その世界は実に細かく描写されている。
入ったらなかなか戻ってこれないよ。

ヴィジュアル系と一括りにしてしまうには惜しい。
曲の素晴らしさも含め、最も好きなアルバムです。
その当時のエネルギーを全部注ぎ込んだような熱さも感じられる。



#1. Intro
アルバムの導入部分となる、57秒のイントロ。
フランス語なのか何なのか分からない一人語りの後ろで、#11「サーカス」のメロディーが流れています。
どことなく、遊園地のメリーゴーラウンドのよう。

この曲は、アルバムのIntroであると同時に、Outroとしての役割も果たしています。
#11「サーカス」の後にループ再生してこれを聴くと、何か、本来あるべきところに到達したような感覚を受けるのです。
そしてまたアルバムの世界が始まる。
最後からここに戻って聴くことで、世界の円環が閉じる。
ぐるぐる回るメリーゴーラウンド。
だから抜け出せないのでしょうか。

ある意味、このアルバムの中で最も重要なトラックです。
近年のプラさんは「インク」「剥製」でも同じようなことをやっていますが、
2ndでその手法が確立されていたというのも何か凄い話です。


#2. May Day
#1の夢物語みたいな風景をかき消すように、楽器隊の爆音から始まります。
まるで感情が爆発したみたいだ。
でも、その割に竜太朗さんの歌声は囁くようで。その不思議な断層に飲み込まれます。
これこそがPlastic Tree。一曲目からぐいぐいとその世界に飲み込まれます。

リーダーを前面に押し出した曲。
とにかくベースラインが強い曲です。
Plastic Treeの曲は全体としてアキラさんのギターが派手だから、そちらに目を奪われがちですが、
リーダーのゴリゴリしたベースが全てを作っているんだな、と思います。 
これは、このアルバムから現在までずっと続く流れ。
Hide and Seekの時のような、メロディアスなベースも良いんだけどね。


#3. リセット
Plastic Treeの年末公演ではおなじみ。
初めてライブで聞いたときは、すごく優しい曲だと思ったけれど。
当時の音源で聞いてみると色々と激しい。

基本的には、ナカヤマさんのギターを軸に据えたストレートなギターロックだけど。
歌詞が凄まじいです。
捩じれまくってて気に止まりづらいけれど、よくよく見ると反骨精神に溢れまくってる。
竜太朗さんのヴォーカルも攻撃的。
よっぽどストレスが溜まってたんでしょうね、この頃の状況には。

そんな中で周りのすべてに対し、「バイバイ バイバイ 全部リセット」だからね。
このエネルギーは凄いよ。
前進するエネルギー。ある意味で浮世を突き抜けている。
20年という時間を経てさらに進み続ける力の片鱗を見ることが出来る曲です。

それほどの力を持った曲だから、今でも演奏できるんだろうな。


#4.  絶望の丘
リーダーが言うところの「ベースから始まる曲」。(剥製ツアー 金沢での一件から)
「ビジュアル系3大丘」のひとつに数えられる曲です。
さらに言うと、リーダーの妹の結婚式で演奏して招待客をドン引きさせたという伝説の曲でもあります。結婚式で絶望の丘って。

色々と曰く付きの曲ですが、
絶望の丘というにはあまりにも美しいメロディーに立ち尽くしてしまいますね。
確かに、静かで空気が澄んだ小高い丘が目に浮かぶような、繊細でふわふわした曲。気持ち良い風さえ感じそう。
でも後ろの演奏はしっかりとロックなのだ。(この曲に関しては、敢えて『後ろの』という言葉を使いますが)
まさにPlastic Treeど真ん中の曲と言えるのではないでしょうか。

このふわふわ感や高揚感はどこから出てくるのだろう。
私は、メロディーラインの拍の取り方かと思うんです。

ベースとドラムはひたすら正確な4拍子を刻んでいて、
その中で、ヴォーカルはAメロで意識的に強拍を避けて歌っている。メロディーの切れ間だったり、短い伸ばし棒が当たったり。
敢えて強拍を外して、アクセントを消した歌い方。多分それがふわふわ感を生み出しているんでしょう。

Bメロも基本的にはそう。初めて強拍がかちっと当たるのは、Bメロの「だーれも、さーわーれなーい、『く』ーらいー」で、
その後、「ゆーめー『に』、ゆー『れ』ーたい」で当たってから後は一転して全ての強拍を拾い始めます。
歌い方も、強拍を強調するような力強いものに変わります。
このひらけ方にカタルシスを感じる。
これはそういう曲です。

まぁそんな小難しいことを言わなくても、
メロディーがきれい! 名曲!
それだけで十分通用する力を持った曲なんですけどね。

この曲について最後にもう一つ。
ギターのナカヤマさんが「ヘヴィ・カッティング・メソッド」というDVDを出していて、その中でこの曲に触れています。
イントロで、ワーミーペダルを踏んで1オクターヴ上げてるんですよ、という話をしていたのですが、
ライブで見ると確かに踏んでいる! さすがナカヤマさん!
そんな感じで、この曲を普通の目で見られなくなったりします。
あれは危険なDVDです。

予想の3倍くらいに長くなってしまったので、今回はこの辺にします。
書こうとすると凄まじく長くなってしまうくらいに良いアルバムなのです。
初めての人ははこれを聴いておけばまぁ間違いない。

続きは次回書きます。