VIPでテキストサイトの共通テーマ「七夕」について書きます。
やっと共通テーマが書ける。

七夕に関するお話ってありますよね。
あの、織姫と彦星が結婚して…というやつ。
私は、それを聞くたびに違和感を覚えます。こんなの現代の子供には分かるわけないと。
例えば、彦星の職業って何じゃありゃ。牛を追う仕事って。
牛乳を絞ったり面倒を見たりの牛飼いならまだ分かるけど、ちょっと仕事としてヌル過ぎませんかね。
羊飼いみたいなスピード感も無い。
こんなガチで誰にでもできる簡単なお仕事、現代では許されない。

織姫も同様。はた織りって。
彼女が中国人だか日本人だかは知らないけど、現代ではタイとかベトナムの下請けに全部投げるような仕事だ。
天帝の娘みたいな時間単価の高い労働者がやれる仕事ではない。

そんなふうに現代人の感覚と乖離したところがあるので、
現代人にも分かるように改訂したほうが良いと思います。
その案を示します。



「七夕物語」

あるところに、LTEという三人編成の音楽ユニットがいました。
編成は次の通りです。
ベガ(ボーカル):女。
アルタイル(ギター):男。
デネブ(キーボード):男。
ちなみに、もちろんLTEとは、モバイルの通信規格である「ロング・ターム・エボリューション」の頭文字を取ったもので、他意はありません。

当時隆盛を誇っていたレコード会社「松浦trax」からデビュー、
ファーストシングルにして10万枚を売り上げるなど、まさに始めから順風満帆といった経歴でした。
キーボードのデネブ(通称・いがちゃん)がプロデュースした曲は売れに売れて、出すたびにオリコン一位。
トップアーティストの中に名前を連ねるまでになりました。

そんなある日、デネブ(通称・いがちゃん)はベガとアルタイルの二人に呼び出されました。
「どうしたんだよ、こんなオフの日に突然」
訝しむデネブ(いがちゃん)の言葉を遮り、アルタイルは言いました。
「驚かないで聞いてくれ、実は俺たち付き合ってるんだ」
それを聞いたときのいがちゃんの衝撃は、いかほどだったでしょう。想像だにできません。
そうか、おめでとう。震える声で祝福しようとするいがちゃんに、アルタイルは言いました。
「だからお前は抜けてくれ」
「……ベガ、お前も同じ考えなのか?」
一緒にいたいとあの時言ったこと、ためらう気持ちも嘘じゃないよ
その時いがちゃんの感じた絶望は涙となり、川となり、天に流れて天の川になったとされています。

そして、いがちゃんはLTEを抜けました。
トラブルを表面化させると経歴に瑕がつくので、「プロデュース業に専念するため」という理由を以ての脱退でした。

しかし、目敏いメディア関係者はそんな取って付けたような言い訳に誤魔化されはしません。
邪魔物が居なくなったことで、レコーディングの時間を減らし、ライブの回数を減らし、トレーニングの時間を減らし、毎日のようにデートを重ねる二人の姿が何十回とスクープされることとなったのです。
しまいにはレコーディングスタジオへの出入りでさえtwitterにUPされ、「ベガとアルタイル、デートなうwww」と書かれるほどになってしまいました。
これが有名な「夏の大三角関係事件」です。

もちろん、そのような状況を社長のマックス氏が許すはずはありませんでした。
その頃、松浦traxがのまネコの商標登録出願を断念したり、
マックス氏肝いりのユニットである「GND」が全く売れないなど、一時期の勢いを完全に失っていたこともあり、
LTEはその責任全てを背負わされる形で解雇されることとなったのです。

社長の怒りをかって解雇され、離婚を余儀なくされたベガとアルタイルは、
その後、
生活保護を受給し、楽しく過ごしました。

めでたしめでたし。





が、じつは、この話には続きがあります。

アルタイル「計画通り」
マックス社長「計画通り」
ベガ「それなりの日常でそれなりに来たけど、こんなにも満たされる事なかった

そう、すべてはマックス社長の差し金。
離婚させたのは、生活保護を2世帯分に増額させるためだったのです。

しかし、生活保護を受けている以上、表立っての音楽活動はできません。
だって役人に見張られているから。まとまった印税が入ってしまうと、生活保護を打ち切られる危険性さえあります。

そこで、マックス社長は、年に一度、7月7日の夜にだけライブと握手会を開くことを二人に許可しました。
一日くらいならバレないバレない。
しかし、LTEのライブと言えば味の素スタジアム。
晴れたときにしかライブはできません。

そのライブ開催を待ち望むLTEファンは、いつしか7月7日に、てるてる坊主を吊るすようになりました。
ただのてるてる坊主ではありません。
ライブチケットと握手券を吊るしたてるてる坊主です。

中でも伝説のベガヲタとされるD氏(通称:いがちゃん)は、
何千枚もの握手券を吊るすための木を探してきて、まるで何千人の怨念を吸い込んだおみくじのように、一枚一枚吊るしていったのです。
その木には、葉の枚数がアホみたいに多い笹の木が選ばれました。

これが始まりとなり、
毎年7月7日には笹に、握手券を模した短冊を吊るすことが習わしとなりました。
その短冊に願いを書くと、D氏の怨念が世の中のリア充たちを爆発させてくれるという伝説が広まったのです。

これが七夕という行事の始まりです。



※この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件とは一切関係がありません。